2010年4月21日水曜日

伯父のこと 7

翌日、福祉包括センターに再度出向いた。

一部始終を話し、病院の受診も、もしかしたら難しいかもしれない。

それも報告した。


身辺の整理、ゴミの処理は福祉のシルバー人材センターに依頼しようと思ったが
シルバーさんは、ゴミはまとめても
処分するところまではやってくれないので、自分達で持って行くしかないらしい。

それでは、伯父がまた袋を開けて広げかねないので
それじゃ困る、と別の業者に依頼し、見積もりしてもらった。

すると、なんと16万と言うとんでもないお金になったのだ。

16万・・・・・

伯父のゴミのために16万・・・・・。

とんでもない。


そんなお金払えない。

別の業者を探している。


市も、私の話から、電話したり訪問したりして様子を伺うように動いてくださるらしいが
病院などは親戚の方々が連れて行って下さらないとどうにも出来ないと
仰った。そりゃそうだろう。


だがしかし、果たして伯父は一筆書いたものの腰を上げてくれるだろうか。

そしてまたいつ、ボヤ騒ぎを起すのかと眠れない日が続く。

伯父のこと 6

「俺は犯罪者か?何かにつけて一筆、一筆って、
こんなことしなくても俺はわかってるよ!書いてから後で持って来るから
今渡さなくてもいいだろう!」

この期に及んで、また渋りだした。

「犯罪者か?って、犯罪者になってからでは遅いでしょう!
だからみんなが心配して集まってるんじゃないですか!
みんなの気持ちを分かって下さいよ!」

「そもそも俺は犯罪者になっても良かったんだ!姉を殺して俺も死ぬつもりだった!」



こんな事を言い出し、形相が変わり、今にも暴れだしそうな雰囲気になった。


一筆書いた文章はそそくさと引き出しに仕舞い、会議はお開きになった。

伯父のこと 5

「伯父さんも年齢が年齢だし、体のことも心配です。
ちゃんと定期的に病院に行って受診してください」

そしてまたここで先ほどの火事同様の話が始まるのだ。


「「俺は絶対病気にならないように、普段から注意して注意して注意して自分で健康には気を使ってる。
こないだも風邪をこじらして咳の中に血が混じっていたから、日赤に行って
診てもらったんだ。それくらい自分の体は自分でちゃんと管理してるから
どうもないのに病院なんて行く必要がない。
そもそも会社を立て直さなきゃいかんのに、病院なんて行く金がもったいない」


こうやって同じ話を何度も繰り返す。



「「伯父さん、また絶対って言ってるでしょう。
何かあってからでは遅いんだよ?病気って知らず知らずのうちに進行していくんだからね。
火事の件もそうだけど、病気のことも
金金って言うけど、おおごとになってから払うお金と
自分で定期的にメンテナンスして早期発見できる小さなお金では
誰だって小さなお金の方がいいに決まっているでしょう。
おおごとになってからでは会社立て直そうにも立て直せないでしょうに」


まるで小さな子供に諭すような言い方で、穏やかにゆっくり話す。

「俺はみんなに迷惑をかけたくないんだ!」

「迷惑をかけたくないと思ってるのなら、余計身辺整理も病院も行くべきでしょうに」

またここから1時間、堂々巡りの話が始まった。


kかと思ったら、突然まったく違う話をヘラヘラと笑いながら持ってきたりする。

「伯父さん、今、そういう話をしてるのじゃありません。
みんな何のために集まってるんですか。
遊びで集まってるわけじゃないんですよ」


そしてようやく伯父も渋々一筆書くのに同意した。







そこで終わりではなかった。

伯父のこと 4

親戚会議をした。

まず、身辺整理のこと。
身の回りのものを片付けて欲しい。

伯父の言い分はこうだ。
「俺はまだ会社を立て直す。そのためには、今あるものを片付ける訳にはいかない」

立て直すも何も、自己破産して倒産しているのにどうやって立て直すと言うのだ。
金もないのに。

しかももう年齢は71歳。
到底無理話だろう。年金生活でどうやって会社を立ち上げるというのだ?

しかし、頑固一徹な伯父。
こういう話をしたからと言って、まともに聞く耳を持っているわけがない。

私達はこう言った。
「立てなおすなら、立て直してもいい。しかし、今回引き起こした事件が二度と起こらないように
私達と近所の人たちを安心させてくれ」

「俺は絶対火事が起こらないように細心の注意をしている。
今回の火事も、ただ、軍手を乾かそうと思って、家の中で紙を燃やしただけだ」



こういう同じ話を延々と何度も何度も何度も何度も繰り返し繰り返し言うのだ。


「伯父さん、何度も絶対起さないって言うけど、世の中、絶対って言う保障はどこにも無いんだよ?
絶対死なない、絶対病気にならない。そういう保障も証拠もどこにもないでしょう。
芸能人だって先日のスポーツ選手だって、若くして突然逝かれたでしょう。
絶対と言う保障はどこにもないんだよ。
こうやって伯父さんを心配してみんなが集まってるんだから
そこはちゃんと理解してよ。
仕事してもいいから、ご近所さんや親戚に迷惑をかけないようにするのが常識でしょう」


そんな話を延々と1時間も堂々巡りしながらようやく納得(したかどうかは定かじゃないが)させた。

更に、「身辺の整理をします。ゴミなどの処分を業者に依頼することを了承します」と
一筆書いてもらった。


そして「火災保険にも加入します」と。


そして話は核心に・・・・・・・

2010年4月18日日曜日

伯父のこと 3

福祉課に相談に行った。

ボヤ騒ぎのこと

伯父の性格

近所近辺のこと

親戚の状況。


「まずは病院で診断して頂かないことには、こちらとしても動きようがありませんので」


病院か・・・・・


行こうとしないだろな・・・・


親戚会議をすることになった。

自分達を含め、伯父の幸せを考えると、親戚一同で動くしかない。

近所の方々へ迷惑をかけるわけにもいかない。

問題は山積みだ。
一筋縄ではいかないだろう。
何ヶ月、いや、何年もかかる問題なのかもしれん。

伯父のこと 2

天涯孤独の伯父の問題は、本来ならば社長だった伯母に連絡が行くのだが
この伯母も、会社経営がうまくいかない、血の繋がらない現在の家族、
借金問題、目の前のいろいろな問題から逃げ出したくなったのか
何度か自殺未遂をして入院した事があり
今でも精神的に健康な状態だとは言えない状況で
ボヤの連絡は最初伯母に行ったらしいが、伯母からすぐに連絡があり
「具合が悪いので行ってくれないか」と母に連絡があったらしい。

しかし

具合が悪いというのは嘘であると言う事がすぐバレることになる。

その同日、私はスーパーでにこやかに見知らぬ人と談笑する伯母の姿を見かけた。


嘘と逃げの姉と兄を持つ母。

その全責任は一挙に目の乏しい母に降りかかっている。


伯父の自宅のすぐ目の前は、豪邸でプライドが高く、一億円以上かかった家だと自慢している家族。
伯父の自宅のすぐ右隣は1メートルも離れておらず、塗装原料などを取り扱う工場。

とんでもなく火気厳禁の状況にいるのにボヤを起す。


「そもそも家の中で薪をすると言うこと自体、普通では考えられない。
もう福祉にお願いするしかないのでは?」と私は提案した。

母も68歳で目も乏しく、目の前にあるオカズですらまともに箸で挟めないし
メニエール氏病を持ち、頻繁に具合が悪くなる状況で
父も74歳で元気ではあるが恥ずかしい話、「指示待ち人間」で言われた事しか出来ない。
74にもなって、今までどうやって生活していたのか?と思えるほど臨機応変が出来ないのだ。

そういう家庭に伯父のような人間を抱え込む事は到底無理。

かと言って、我が家も高校生中学生を抱えており、毎月の家計は火の車。
借金に継ぐ借金で、伯父を受け入れるのは無理だし
また伯父も我が家に来るとは言わないだろう。
弟もまた新たな命が8月に生まれるので、伯父の面倒どころではない。

母に福祉の話をすると
「伯父が可哀想だ」とおいおい泣いてしまい
「施設に行こうと言ったところで、あぁそうですねと人の意見を聞くような人間なら
こんなに苦労はしないし、未だに会社を立て直すんだ、とガンとして動かないのに」と言う。


目の前に立ちはだかる様々な問題。様々なガンコな人間。


私の後ろにはもう沢山の人間が並んでいて
私は先頭に立ち、前に進むのか、右に進むのか、左に行くのか・・・・・
どの道が一番安全なのか。

誰に聞きようもない。どうしていいのかも分からない。

伯父のこと 1

私の実家の父母は、何故か「家族」に縁が薄い。


父は74歳で、3つ上の兄が東京に独り身で住んでいる。

母は68歳で3姉兄の末っ子。

今回は、母の兄の話になる。

母の兄、つまり私にとっての伯父は、以前印刷業を営んでいて
経営が上手く行き、市内でもトップを誇る時代もあった。
が、タイプライターやパソコンが普及し始め
次第に名刺も年賀状も書類も、簡単なチケットですら自宅で作る時代になり
印刷屋はだんだん不景気になって行ってしまった。

定年退職した伯母が「私が会社を立て直す!」と名義も何もかも自分に変えて
自分が社長でやっていたが、これまで全然畑違いで仕事をしていた伯母が
いきなり印刷業を営もうなんて到底無理な話だった。


案の定、とうとう伯父は家族も会社も失う事になってしまったのだ。

伯父の母、つまり私にとっての祖母も他界してしまい、叔父は社員も失い、天涯孤独の身になった。

幸い、現在の年金でどうにか生計は立てているが
なにをどう思っているのか、自己破産した今でもまだ

「会社を立て直す!」と言って聞かない。

だからと言って家の中は仕事がしやすいような状況かと言えば全くそうではなく
むしろ真逆で「モノ」を捨てれない性格から
所謂「ゴミ屋敷」と化している。

掃除はしない、片付けもしない、モノは溜め込む。

近所住民の大迷惑となっている伯父。

そんな伯父が1年前、ボヤ騒ぎを起こした。
「寒かったから」と家の中で薪をしたらしいのだ。

家の窓から煙が出ているのを近所の方が発見し、通報した。

散々叱られて注意を受け、反省して身の回りの片付けをするかと思っていたが
全く反省の色はなく、生活は全然変わらない。

そしてその1年後の4月11日、またボヤ騒ぎを起した。


今回は消防車2台、パトカー2台が出動する大騒ぎになった。


今回の事で母は警察や消防署員から、こっ酷いお叱りを受ける事になったのだ。